第五章「居場所」
慌ただしい高校受験が終わって、僕たちは高校生になった。僕と隼人は第一志望の同じ高校に合格して、雪野さんも一緒だ。
受験直前に一か月以上もまともに勉強できていなかったのに、さすがというべきだろう。最後の模擬試験ではB判定に下がってすごく焦っていたけど、それでも一か月足らずで巻き返せたのはそれまでずっと真面目に勉強を続けてきたからだろう。
彼女の努力にはいつも尊敬ばかりだ。そんな姿を近くで見ていたから、僕も受験勉強を一生懸命に頑張れたと思う。
初日から一人で行くのは心細いという隼人を、校門手前の交差点の電信柱に寄りかかって待っている。澄み渡った空に宙をひらひらと舞う桜。もう春だな、なんてしみじみ感じていると、遠くからこちらに向かって走ってくる人影が見える。
「おーい、透ー」
「……隼人?」
確かにあれはよく知る幼馴染だが、つい二度見をしてしまう。
「どう? かっこいい?」
「…………」
ずっと坊主頭だった隼人は、野球部を引退してから髪を伸ばすのが憧れだったとかで、卒業式のころには襟足が肩にかかりそうなくらいになっていた。その伸びた髪を今日はワックスでがっちりと固めて、刺さりそうなくらいにつんつんしている。
「おい、なんか言えよ」
「あー、ごめん。んー……っと、ウニみたいだな」
「どういうことだよ!」
ちょっとからかうように言ってみると、予想通り隼人はご立腹のようだ。我ながらぴったりの例えを思いついたと、つい吹き出してしまう。
「え? 変なの?」
「いや、いいんじゃない。なんか隼人っぽくて」
「なんか……褒めてないだろ」
次回更新は3月13日(金)、20時の予定です。