【前回の記事を読む】四十九日を終えたばかりの彼女は、痛々しいほど痩せていた…家が全焼する火事で父親を亡くし、祖父母に引き取られたという。
第五章「居場所」
校門をくぐり、玄関の前まで行くと人だかりができている。すぐ横の掲示板にクラス名簿が貼り出されているといっていたから、みんなそれで集まっているのだろう。僕たちも見に行こうと言おうとしたところで、後ろの方で頑張って背伸びをしている小柄な子が目についた。
近くまで行ってみると、それは見慣れていたはずなのにいつもとは違う雰囲気の雪野さんだった。
「雪野さん?」
「あ! 黒田くん。それに……佐竹くん、だね」
彼女もまた、隼人の頭を見て驚いた表情を見せた。
「えー! 雫ちゃん、髪下ろしてる!」
「あ……やっぱり変だよね、似合わないよね」
中学のときはきっちりと後ろに結っていた髪を、今日は下ろしている。彼女はとっさに頭を押さえて隠そうとしているが、さらさらと風になびく黒い髪がとても似合っていて、ほんの一瞬だけ見惚れてしまっていた。
「絶対そっちの方がいいよ! な、透もそう思うだろ」
「うん、すごくいいと思う」
「おい、さっき俺にいいんじゃないって言ったときとは明らかに違う言い方だな」
「そんなことないって」
頬を膨らませて、まだ納得していない隼人をなだめるように言う。
「佐竹くん、すっごく変わってたから一瞬気づかなかったよ」
「高校生になったしイメチェン。雫ちゃんも?」
「……うん、下ろした方が大人っぽく見えるかなって」
「見える見える。すっごく可愛い」
彼女は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。僕はこういうとき恥ずかしくて素直な言葉をかけるのが苦手だけど、ストレートに可愛いと言える隼人はすごいと思う。
周囲を巻き込んでは振り回して困らせてしまうこともあるけど、こうやって自分の気持ちをまっすぐ伝えられる正直な隼人のことを嫌いな人はいないと思う。僕自身もなんだかんだ隼人のペースに巻き込まれることに居心地のよさを感じている。
「雫ちゃん何組だった?」
「それが、人がたくさんいてまだ見てないの」
「じゃあ一緒に見にいこうよ」
人混みをかき分けて掲示板の正面に行くと、七組まで、二百人以上の名前がずらりと貼り出されていた。