「……ここから探すのは大変だな」
「……そうだな」
「…………あ!」
彼女の指さす方に目をやると、三人の名前が近くにあった。僕と雪野さんが二組、隼人は隣の三組だ。
「えー、また透と雫ちゃんと別のクラスかー……」
「まあでも隣のクラスだし」
「そうだよ、クラスが違っても今までみたいにお話しよう」
隼人は雪野さんのことが好きだから落ち込むのも無理はないだろう。中学三年生のときのクラス替えでも雪野さんと別のクラスだったし、あからさまにがっかりしている隼人を慰めながら、それぞれの教室へと向かっていった。
数日もすると、すぐに新しい友達がたくさんできた。中学校時代にサッカーの試合で戦ったことのある他校の見覚えのある人がいたり、今は別の高校に行ってしまった悠人や拓也の小学校の同級生がいたり、世間は結構狭いようだ。隼人もさっそく隣のクラスで人気者のようで、「透の幼馴染、面白いよな」なんて話もよく話題に上がる。
それでも隼人は毎日お昼になると僕のクラスを訪ねてきて、一緒に昼ご飯を食べるのが日課になっていた。新しい友達より幼馴染といる方が気を遣わないなんて言っているけど、きっと雪野さんと話したいんだろうというのには鈍い僕でも気づいている。
そんな隼人が半年が過ぎたころからぱたりと僕たちのクラスに来なくなった。とはいっても、テスト期間に入ると一緒に図書室に行ったり、お互いの家を行き来したりしているから、隼人と僕が疎遠になったということは全くない。
つい一週間前には文化祭もあったし、そこで仲よくなった友達と盛り上がっているんだろう。
高校の文化祭は中学とは規模がまるで違って、クラスごとに模擬店を出したり、お化け屋敷をやったりと、夜遅くまで準備をしていたから、僕もクラスの友達と一気に距離が縮まった。だから隼人が来なくなったことを、そんなに気には留めていなかった。
文化祭の浮足立っていた雰囲気から一転、すぐにテスト期間に入った。土曜日の今日は早起きをして自宅で勉強をしていた。国語が現代文と古典になったり、理科が生物、化学、地学になったりと、とにかく中学のときと比べて科目が多い。テストも四日間と長丁場だ。
二年生からは文系と理系にクラスが分かれるから、今のうちから大学とか将来のことを考えておかないといけないし手は抜けない。
(……そろそろ休憩にするか)
時計に目をやると、もうお昼を回っていた。結構長い時間集中していたようだ。背伸びをしていると、携帯から着信音が鳴る。
~~~~♪
表示を見ると『佐竹隼人』。すぐに受話ボタンを押す。
「もしもし、隼人どうしたの?」
「……急に悪いな。透、勉強中?」
「ちょうど休憩しようと思ったところだよ」
いつもは僕の用事なんてお構いなしの隼人だが、なんだかいつもと様子が違って声も暗い。何か嫌なことでもあったんだろうか。
「今から透の家に行ってもいい? そんなに長居はしないから」
「大丈夫だよ。何かあった?」
「……いや、そっちに行ったら話すから」
わかった、と言って電話を切ったが、終始落ち込んだような口調だった。長い付き合いだったから、隼人が落ち込んだりするのは何度も見てきたが、いつにもまして深刻な雰囲気だった。
二十分ほどすると、隼人が家にやってきた。玄関を開けてすぐに驚いたのは、つんつんにしていた髪をそり落として、坊主頭に戻っていたことだ。
「え? 髪どうしたの?」
「……もういいんだよ」
「とりあえず僕の部屋に入って待っていて」
「……うん」
食器棚にあった頂きもののお菓子と冷蔵庫のジュースをいくつか見繕って部屋に行くと、神妙な面持ちで隼人が正座をして待っていた。
次回更新は3月14日(土)、20時の予定です。