「そうなんだよ。まだ関係性ができていないからこそ、先にアンケートを書いてもらって、そこでヒアリングをするんだ。あとね、実は、断られる原因は、斎藤くんにもあるんだよ」

断られる原因は僕にもある? 僕は思わず目を見開いた。

「な、なんで僕が悪いんですか?」

「別に悪いとかじゃないよ。長所でもあるんだけど、お客様からしたら斎藤くんって良い人そうだから断りやすいんだよね」と金光さんはニコニコしながら言った。

「え、ええぇ……、良い人そうなのは営業マンとして有利じゃないんですか?」

僕は頭をガクッと大袈裟に落とした。

「有利な部分もあるんだけど、それだけじゃ武器にはならない。男女の恋愛と同じだよ。『いい人なんだけど、恋愛対象として見られない』と言って断られたことはないかい?」

「……あ、あります」

まさに僕のことだ。金光さんはなんでこんなにも僕のことがわかってしまうのだろうか。

「恋愛と営業って似てるんだよ。そんなに性格が良くなくても押しが強い男の方がモテるだろ?」

「言われてみればそうですけど、なんだか納得できないです。不平等です」と、僕は口を尖らせながら言った。

「がははは。この押しの強い営業マンと斎藤くんが決定的に違う点、それはね、『断りづらい』ということなんだよ」

「……断りづらい?」

「そう。斎藤くんは持ってる雰囲気が優しいんだけど、この人なら『検討します』って言っても笑顔で許してくれそうだと思われてるんだよ」

これには言葉が出なかった。小さい時から「優しい」「人が良い」と周囲から言われ、褒められていると思っていたし、そういう自分であろうと努力してきた。

でも、それが原因で売れていなかっただなんて……。僕ってやっぱり営業に向いていないのかなぁ。

「勘違いしたらだめだよ。プライベートではその性格は大いに魅力的だと思う。俺もバーで斎藤くんと会ったときに、とっても素敵な青年だと思ったよ。でも、営業という仕事においては、それを武器にしないと、正直言って売れない。残酷だけどね」