【前回の記事を読む】「それなら今すぐ50万払えるか?」…覚悟を見せろと言われて、100万出すことを約束した。
一つ目の教え
翌日、仕事を終えた僕は、二〇時に堀江公園のそばにある金光さんのオフィスを訪れた。
そのビルは外観からしておしゃれだった。コンクリート造りの五階建てで、南国の植物がライトで照らされ、リゾートに来たような雰囲気を醸し出している。エレベーターで三階に上がると、『KANEMITSU×DESIGN』と印字された看板が目に入った。僕は深呼吸してから、インターホンを押した。
「あ、あの、昨日バーでお話しした斎藤ですけど……」
緊張で声が震えているのが自分でもわかった。
「はい、どうぞ」
ウィーン、ガチャ、と機械的な音を立てて電子ロックが開いた。中に入ると、ビルなのに家の玄関のような作りになっていて、外からの印象よりもかなり広かった。
リビングへと続く扉を開くと、三〇帖くらいの大きな部屋があり、壁一面に書籍がきれいに並べられている。リビングに螺旋(らせん)階段があり、いかにも堀江にあるおしゃれなビルという印象だった。
「金光さん、こんばんは。本日はよろしくお願いします。ビルなのに螺旋階段があるんですね」
「斎藤くん。よく来たね。ここ、メゾネットになってるんだよ。このフロアは俺の事務所で上の階はトレーニングルームになってる。また今度見せてあげるね」
「すごいですね。ぜひ今度見せてください」