堀江でこれだけの平米数のビルだと家賃はどれくらいするのだろう? 僕はオフィスの凄さにただただ驚かされた。今の自分のステージより遥か先をいっている。
「さぁ、それじゃあ早速本題に入ろうか」
急に金光さんのスイッチが入った。僕はあわてて誘導されたソファに座った。
――よし、これで僕はトップセールスになって立花さんと風香を見返してやるんだ。
「よろしくお願いします!」と、僕は力強く言った。
「はじめに、斎藤くんはトップセールスについて、どんなイメージを持ってる?」
「……ええっと、とにかく売る人で、たとえ断られてもそこから購入したくなるようなトークで切り返していくような感じですかね」
「んん、まぁ実際は少し違うんだよね。実は、ノーとはっきり断っている人をイエスに切り替えるのはものすごくハードルが高い。エネルギーも消費する。だから、ほんとうのトップセールスは、ノーと言われた瞬間に身を引くんだ」
「え、そうなんですか。どんなお客様にも粘り強く営業をかけていくものだと思ってました」
実は、会社の先輩や支店長がよく言っているのが、「たとえ断られても、お客様が帰るまで売り込め」という言葉だ。実践してみるとこれがまた辛いのだ。
断っているにもかかわらず、「でも、こういう所がお客様の条件には合っていませんか?」などとくらいついていくと、お客様との間に気まずい空気が流れる。