【前回の記事を読む】ある時気付いた。お客様は初めて家を買うのだと。他の営業マンに先越される前に、俺らがプロとしてまずやるべきことは...
一つ目の教え
「そうだろ? 君の仕事は担当している物件をお客様に気に入ってもらうことじゃなくて、お客様に合った最適な物件を提案することだよ」
「確かにそうですね」
「だろ? お客様もはじめての不動産の購入で、つい全ての条件を満たそうとしてしまうんだけど、それは失敗したくないっていう人間なら誰もが持っている心理が働くからなんだよ」
僕は金光さんに教わった話を一生懸命メモに取った。ノートにまとめている間、金光さんはじっと待っていてくれた。
「だいぶとわかってきたようだね。じゃあ、次に重要なのは『先回り』だ」
「なんか技名みたいでカッコいいですね」
「がははは、そうだね。斎藤くんはいつもどんな流れで物件をご案内してるの?」
「えっと、まずお問い合わせをいただいた物件で待ち合わせをして、物件を見て頂きながらヒアリングしています」
「……うーん、これには絶対的な正解はないんだけど、その方法だと決断してもらえずに帰られることが多くないかい?」と、金光さんは渋い顔をしながら言った。
「はい、たしかに多いです。ひどい時はアンケートも書いてもらえずに帰られてしまいます」
「最悪の状況だね。確か明日は案内の予定だったよね?」
「はい!」
「よし、じゃあ明日は物件を見てもらう前にアンケートを書いてもらおうか」
「え? 物件を見てもらう前に……ですか?」
「そうだ。これだったらほぼ一〇〇%アンケートを書いてもらえる」
「でもいきなりアンケートを書いてくださいって言ったら、断られたりしないですか?」
「大丈夫! むしろいきなり言った方が書いてもらえるよ。初対面でこれから物件を案内してもらうのに、『アンケートは書けません』なんて言ったら気まずい雰囲気になるだろ?」
「ははは。たしかに気まずくなりますね」
僕がお客様の立場だったら絶対言えないなと思った。