【前回の記事を読む】末期癌の母が通っていた道場…板張りの床に、パイプ椅子が3つ。渡された紙コップのお茶は、何か味が変で…
サイコ3――奇跡の手
「インチキですと? 私は医者から見放された数々の末期癌患者を救ってきた。患者の声が私が本物である証拠だ。そのような無礼な発言は許せません。お帰りいただこう」
「ここにはテーブルがない。そして目を閉じている最中にコップを渡されると飲みたくなくても飲まざるを得ない破目になる。それを利用しておまえたちは1週間、患者に抗癌薬を飲ませていたのだ。
それが功を奏して癌細胞は消え失せた。だが、この薬は効果も強いが副作用も相当強い。だからその後、ほとんどの患者が急性間質性肺炎に罹患し、死亡していったのだ」
「何を根拠にそのようなことを」
その時、鍬下が立ち上がり、警察手帳を見せた。
「警視庁の者です。今から応援を呼びますので、そのお茶が入ったポットを押収させていただきます」
それを聞いた途端、其田と助手は目配せをして、一目散に玄関めがけて走り出した。鍬下が慌てて後を追い、其田を捕まえたが、其田は中国武術の技で彼を振りほどき、思い切り蹴り飛ばした。鍬下はしたたかに後頭部を床に打ちつけ、気を失ってしまった。
「鍬下さん!」
麻利衣が鍬下に駆け寄った。その隙に助手がまず玄関から逃げ出そうとしたが、そこに賽子が立ちはだかり、手刀で一瞬で気絶させてしまった。其田は賽子と正面から向かい合った。
「そこをどいてください。女性に怪我をさせたくありませんから」
「おまえなど、超能力(フォルス)を使うまでもない。久しぶりの運動といこうか」
賽子は中国武術の構えを見せ、右の掌を上にして指先で手招きして相手を挑発した。怒った其田は賽子に挑みかかったが、拳や蹴りも全てかわされた挙句、手首を取られて床に投げ飛ばされた。賽子が蹴りでとどめを刺そうとしたが、其田は素早く起き上がり、攻撃をかわした。
「なかなかやりますね。だが、私には気功法がある。次の攻撃は全宇宙の気を集め、一点に集中させる究極の奥義です。今までこれを受けて立っていられた者はいない。あなたのようなか弱い女性に使うのは気が引けますが、やむをえません。覚悟してください」
そう言うと其田は再び空中から何かを掻き集めるような仕草をし始めた。賽子はそれを冷たい視線で眺めていた。動きが止まったかと思うと突然其田が賽子めがけて突進し接近すると、右の掌を全身の力を集中させて突き出した。
その瞬間、賽子も右の掌をゆっくりと前に差し出した。二人の手が合わさった瞬間、ものすごい衝撃で其田は後方に吹き飛ばされ壁に激突し、白目をむいて口から涎を垂らしながら気を失った。賽子は掌を見ながら呟いた。
「こいつ、ちょっとは超能力(フォルス)を使えたのか。思わず私の超能力(フォルス)が反応してしまった」