「ブブーッ」

ダメ出しその二。

米をもむようにして洗ったら、白濁した水は捨てる。二度、三度繰り返して、水が透明になったら、水を張る。白濁する理由は、精米した際の米ぬかが付いているからで、その米ぬかが臭みの原因となる。

無洗米ならそれでも何とか炊けるだろうが、濁った水を捨てることなく炊いたら、美味しくないに決まっている。

「水は、だいたいこれぐらいでいいか?」

目分量で適当に水を入れている。

「ブブーッ」

ダメ出しも疲れてきた。

「二合なら2、三合なら3、お釜の内側に目盛りがあるでしょう。そこまで水を入れればいいのよ」

父は、洗い方から水加減まで、初めて現代の米の炊き方を習った。 母の入院中に、父は初めての経験をいくつもした。

まずは食料の買い物。スーパーマーケットやデパートの地下などには、行ったことがなかった。

男が買い物など行くものではないという固定観念から、食料は女が買いそろえて、調理をするものと思っていた。

それでも冷蔵庫に食料さえそろっていれば、食事は何とかなる。

母が留守のとき、一人で昼食を食べるとなると、炊飯器で炊かれたごはんを茶碗に盛り、納豆か卵をかけて、食卓の醤油をかける。それぐらいは、父にもできた。

とはいえ、たまにはうまいものが食べたいと思ったのか、父は最大の勇気をふるって、買い物に出かけたのだった。

翌日、私が台所に行くと、異様な臭いが鼻を突いた。

何やらプラスチックを燃やしたような、嫌な臭い。

「昨日の夜は、何を食べたの?」

さっそく問いただす私に、父は得意げに話しだした。