しかし幾日、幾週間経ても両名は、竜興の攻撃をまともにくらい、築城はおろか土台さえ造営出来ない日々が続いた。築城は、難所を極めた。

次の軍議の席上、信長は激高した。檄を飛ばす信長は、上座に座る2人の家臣の面前で物を蹴散らしながら吠えた。

「お主ら織田軍団の範を示す重鎮2人が一体何をしておるのだ! この、うつけの役立たず者、おのれらは、やる気があるのか?

あれからどれほど時間が経たのか判っておるのか? お主らはぶら下がりの蟻か? そのような働かぬ重臣は、織田軍団には要らぬ」

「す、すみません。いかんせん、竜興の攻めもきつく……」

佐久間と柴田が言いかけると、軍議の下手の方から藤吉郎が声を発した。

「信長様、私、藤吉郎ならば3日で築城させます。どうか私に差配を。墨俣に築城できれば、敵の館までわずか3里ほど、攻め入る場所には好都合でござります」

「おお、藤吉郎か! よし、そなたはできると申すか? ならば、そなたに全権を委譲する。早々に築城せよ。必要な物は全てこの佐久間に申せ。佐久間、よいな、判ったか?」

「御意に」と佐久間は恐れおののき、平伏した。

「殿に役立つ働きをお示し申し上げます」藤吉郎が言うと信長は、

「だが藤吉郎よ、どのようにして進めるかの概略だけは申せ」と命じた。

すると藤吉郎は、「はっ、美濃の川並衆に幼少より知り合いの蜂須賀小六がおります。彼ら蜂須賀党(はちすかとう)の力を活用して出城、築城に役立ててみせます」と神妙に言った。

しかし、この小男の藤吉郎は、口上どおり、わずか3日で墨俣城を築城させた。