信長は、天守から美濃の中辺りを扇子で指し示しながら続けた。

「見よ、いよいよ美濃が近く見えている。実に良い景色だ。間もなく我が領内に入るであろう。竜興を我が城の門下に馬を繋がせる日も近いぞ」

藤吉郎の帰還と共に満悦な面持ちになり饒舌になる信長だった。

「小牧築城が無事の完成、誠に祝着に存じます。丹羽殿のおかげです」

「そなた達の段取りあっぱれであった。褒美を取らす。黄金を帰りに持って帰るがよい。

丹羽には褒美を取らせている。佐久間にはよう言っておいた。聞いているだろうな。犬千代も褒めておった」と信長は藤吉郎に念を押した。

「は、殿のお言葉、ありがたき幸せ、益々仕事に励み申す。佐久間殿より格別なお褒めと労いを頂戴してございます。

前田殿からもお褒めの言葉を頂戴したこと誠に誉れです。ありがたき幸せに存じます」藤吉郎は満面の笑みで信長に答えた。

藤吉郎は信長の考え方に心酔しているのだ。人間織田信長の存在に憧れ家臣を志願した藤吉郎であった。

「そうか、嬉しいか。体に気を付けてもっと働けよ、良いな? ところでだ、小牧築城の件で聞きたいことがある。あの城の石垣は一体、どこから工面致したのだ?」と信長は聞いた。

次回更新は3月8日(日)、19時の予定です。

 

👉『信長様と猿』連載記事一覧はこちら

【前回の記事を読む】「貴殿がそのように申すは何かあったのか?」佐久間の苛立ちを横に呑気に話す前田利家。すると、奥の間から叫び声が聞こえ…

【イチオシ記事】妻の姉をソファーに連れて行き、そこにそっと横たえた。彼女は泣き続けながらも、それに抵抗することはなかった