尾張統一、そして小牧城へ

◆永禄6年(1563年)7月頃

岩田は職務に戻っていった。佐久間は独り言をいいながら首を傾(かし)げ、思案する面持ちで大回廊を殿がいる方向へと歩いていた。

「なぜ、あれほど血相を変え殿は藤吉郎を探すのか? 明日の軍議で会うであろうに……。よく理解できぬわ」

すると2人の重臣が廊下の向こう側から近づいてくる気配に気がつき、佐久間の表情が明るくなった。それは、信長をよく知る前田利家と柴田勝家だった。

「これでなんとかなる」そう呟くと佐久間は、

「これは良いところに。前田殿に柴田殿ではござりませぬか。この場でお会いできるとは、うれしゅうございます。お二人に会え安堵いたした」と言いながら小走りに歩み寄っていった。

すると、「何事だ? 貴殿がそのように申すは何かあったな?」前田殿が言った。

「至急、尋ねたきことがあります。ところで木下殿はどこにおられるか、ご存じないでござるか?」と佐久間は聞いた。

「おお、これは佐久間殿、どうなされた。そなたも、ご登城されていたのですな。これは、ご苦労様でござる。殿が、また何か騒いでおるのか?」

前田殿は、佐久間の苛立ちを横に呑気に言った。

「おお、そうじゃ。儂も明日の軍議に参加のため参集した次第。議題は、いかに早く美濃を攻略するかだったな。竜興を陥落させる方法を述べよといった趣旨の内容であったな。明日殿に直々にお伝えするところだ」と続けた。