「これは林ではないか。良いところに居てくれた」
林にすれば、ほっておけない状況を察し殿の面前に出たまでのことだった。
そのため、信長が次の質問を問いただす前に、林は、丁寧に信長に呼応していく。
「木下を探す殿のお声は城内に響き渡ってござりますが……。
明日、木下は軍議に参加予定。明日には登城します。よって今晩には館に入るかと存じますが、如何なされましたか?」
と林が言うと信長は、「おお、其のことよ、猿は今、どこにおるのかの?」と待ちきれない様子で言った。
「は、そのことでござりますか。木下は信長様の仰せで、目下、長良川周辺にて働いています。今日は確か、長良の西部地域あたりで調略活動に奔走していると聞き及びます。
なので城内にはおりませんが、明日は軍議もあり、今晩には城内の館に帰任すると思われますが」
林の説明を聞いた信長は饒舌になって受け答えする。
「そうであったな。林、良く教えてくれた。すっかり忘れておった。礼を申す。
だがな、早急に登城せよと藤吉郎に伝えてくれないか。明日の軍議の前に調整したい名案が浮かんだのよ。その結果を皆の前で軍議にかけたいゆえ、その前に藤吉郎と話がしたいのだ」
林は、「は、判りました。長良川西部へ早馬を出させましょう」
そう言うと、近習のものを呼びつけ、手配の指示を出した。
次回更新は3月7日(土)、19時の予定です。
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