「まあ、そんなに焼くな、信長様のお考えがあってのご所望だ。仕方がないわ。木下は、仕事が我らよりできる。しかも憎めない性格、かわいい奴だ。

それに木下は、いつも信長様がなさりたいだろうことを我らより先に進言申し上げ、首尾良く実行する。たいした奴だ」

岩田殿が感嘆しながらも嫉妬混じりで溜息をついた。

そんな会話を2人がしている間にも小牧城の主、信長は声を発し続けている。

「おい、だれかある? 誰も居らぬのか? 儂の声が聞こえぬか? 返事を致せ、猿はどこにいる?」

信長の声が強くきつく響き渡っている。

「殿様が、ずっとお探しじゃ。前回のような剣幕になってきた。やばい、まずいな」と話す家臣たち。

「怖いな、とばっちりを受けるかもしれぬ。注意せねば。殿が怒らぬように、とにかく居場所を早くお伝えしろ」

周囲に緊張感が走る。信長は気に入った相手ができると、とことん好きになり、常にそばに置きたい性分だ。

風貌は全く異なるが、性格、思考が似ている藤吉郎もそばに置きたい一人のようだ。