「凄まじい筋書きですな。信長様、さすがでございます。策略家としても天才的な発想です。
私は生涯、殿を敵には絶対したくありません。一生ついて参ります。信長様」
藤吉郎は、信長の袂を握って平伏した。
すると信長は意外なことを述べた。
「しかし、謀反人、戸部のおかげで、儂が助かったのも事実だ」
藤吉郎は疑問に感じた。『裏切り者を成敗した。それで助かった?』
「信長様、今、助かったと言われましたか?
裏切り者の戸部のおかげで助かったとはどういうことでございましょうか? 凡人の猿には皆目見当がつきません。是非にもご説明してください」
藤吉郎は懇願した。
「儂の窮地を逆手に取り、今川義元の情報ルートを壊滅させることに成功しただけよ。その結果、悠々と桶狭間で今川義元の大軍にも我が精鋭部隊で勝利した。
さもなければ、儂とて桶狭間の前に今川勢とどう対峙していたことか?結果的に苦戦していたかもしれぬ。もしや負けたかも。
さすればこうして、お主とこのような話など出来ていなかったかもしれぬ。如何(いか)に戦い慣れしていない、公家武家集団とはいえ、数が違い過ぎた」と信長が言い、その真意(しんい)を藤吉郎に説明した。