【前回の記事を読む】生後2か月の赤ちゃんネコが、先住猫の洗礼を受ける!…目を合わせず、顔ではシャーと言いながら、尻尾は振っていて…

第三章 女神様に教えるヌシ

見ると、恥ずかしいのか、ちょっと困った顔をしてみせる。いや、遊んであげているわけではないですよ、と素知らぬ振りをする。子猫の世話に奮闘しているうちに、あっという間に一か月が過ぎる。

そろそろケージも手狭になってきたので、ケージの扉は開けたまま、鍵はかけないで外出してみた。帰ると、ヌシはいつも玄関まで迎えに来てくれる。その足元に小さな女神様がついてきた。

ヌシはシャー(それ以上前に出るな!)と言いながら立ち止まり、こちら側に挨拶した。

おかえりなさい、ご主人様、今日は小さいのも一緒です。

よろしくお願いします。

ヌシは教えるのが上手だったようで、女神様もよく従った。

ヌシ、餌を残すようになる

心の扉の鍵はどんな形をしているのだろう?

扉を開けたらそこはどんなところなのだろう?

ヌシはどんな思いでわたしと子猫を見ていたのだろう。慌ただしく過ぎていく日々の中で、思い出はすべて心の中に残るだけだ。

家猫は子猫をしつける時に、飼い主にも挨拶に来るという。その儀式を終え、すっかり親というか親分になったヌシは、以前よりもしゃんとしたように見えた。女神様に合わせて、ヌシのごはんも幼児食になった。

粒が小さく高カロリーの子猫専用のごはんは、老猫ヌシにも合っていたようで、ちょっとずつ弱った身体が元に戻ってきたように見えた。これは嬉しかった。怒ってシャーと言いながら歩く後ろを、トイレまでついてこられて、くたくたのはずなのに、ヌシはごろりんと、横たわりながら、それでも尻尾を動かして子猫をあやしている。

母親、父親、先輩、親分、狩猟の先生、ボディーガード、子守り、全部をやりこなすうちに、いつの間にかヌシは若かった頃のヌシにほんの少し戻ったように見えた。

知育玩具(というかパズル)で、いろいろな形に穴の開いた基盤にぴったりのパーツを入れていくゲームがあるが、子猫を迎えた我が家は、新しいおもちゃを基盤ごと手に入れたようなそんな楽しい日々だった。毎日新鮮なハプニングが起きる。

「待って、まだこのピースがどこに入るのかわからない~」と慌てているうちに時間切れ、ゲーム終了~!

老猫ヌシとの暮らしは、それはそれで穏やかな日常ではあったが、ヌシの育った基盤と、年の離れた女神様の育った基盤は違っていて、ついていくのに大変だ。いや孫の世話に苦労する祖母と祖母猫か。