【前回の記事を読む】十分に成熟した女性の、ホットパンツから伸びたカモシカのような足に目のやり場を失っていると…

ナタリーはそう言いながら今度はハンカチを私の額に押し当てたのだった。

「彼らは君の知り合いかい?」

「いいえ、この町の人間ではないわ。でも時々、見かけることがあったの。タカオが助けてくれなければ、今頃レイプされているところだった」

「僕が君を助けたって?」

「そうよ。何も覚えてないの?」

確かに殴られる直前、咄嗟にブルースリーの真似をしてみたところまでは覚えていたのだが、これで彼らが怖気(おじけ)づいたとは到底見えなかった。

いずれにせよ、すでにそこに男らの姿はなく、代わりに迫りくる夕闇のなかでナタリーのしなやかな肢体がかすかなシルエットとなって見えるだけだった。

「さあ、帰ろう」

「送ってくれるのね」

「当たり前じゃないか」

この時から私とナタリーはその距離を少しずつ縮めていくことになる。

その翌日から時折ではあったが、ナタリーはティナやレイモンドと入れ替わるようにわが家を訪れるようになった。

「怪我の具合はどう?」

「腫れはだいぶ引いてきたけど、このひどい顔を誰にも見せぬよう、苦労しているよ」

私はテーブルの上に無造作に置かれたマフラーとサングラスを指さしながら言った。

「もっとあなたの国のことが知りたい……」

私はこの時から彼女のためにも少なからず時間を割かざるを得なくなったのであるが、若い魅力的な女性を前にすれば決して悪い気はしなかった。

私は貧弱な語彙を駆使して、日本のありとあらゆることをナタリーに伝えるのが楽しみにすらなっていたのである。彼女も問わず語りに両親が数年前に離婚したこと、母親はスクールバスの運転手をしながら三人の子供を養っていることなどを私に語ってくれたのだった。そして、

「いつかあなたの国に行ってみたい……」

栗色の瞳を輝かせながらそう呟いたのを私は聞き逃さなかった。