同じ総合商社の金融系セクターにいた清野のオッチャンが、手を貸してくれた。

「能美、この仕組みは、地方銀行や信用金庫に実装してもらうとよいわ」

地域の中小金融は、地域の中小企業と深いつながりを持つ。顧客情報は与信管理のデータベースにインプットされていたが、それぞれの得意技や新ニーズを掘り起こし、ビジネスの出会いを生むような建て付けにはなっていなかった。

行内に限られて共有していた企業の情報を、他の地域や他行と守秘義務をもって活用することにより、境界を越えた新規機会も見込めるのではないか。

ネイビーとオッチャンは、当時〈サイロ・システム〉と揶揄されていた商社組織の立て割りの壁も越境し、浮上のチャンスを模索する地銀や信金に話をつけていった。

ビジネスマッチングを起動した当初から、積極的にコミットしてくれたのが世耕さんだった。

それまで彼は、地方に散在するテック系の才能とつながるため、靴底をすり減らしながら、各地の研究機関やベンチャー集積地区をまわっていた。仕組みを通して効果的に〈仲間〉と知り合い、時には技術提携やM&Aなどの経営手法を駆使しながら、世耕さんは事業の礎を固めていった。

「わざわざ東京のはずれまで、ありがとうございます」

ネイビーは四合瓶を開封し、発泡がおさまるのをゆっくり待つ。うす濁りのスパークリング酒を、ふたつのジングラスに注ぐ。

「明日の朝から、箱根で会合がありましてね。夕飯までに現地へ入ればいいものですから」

「ひとの対話が、リモートからリアルに戻りはじめていますが、お集まりもまた増えていますか?」