太陽は地平線から昇り、箱船をジリジリと焦がした。

目を覚ました人間のスズキ青年は、傍らの虫かごを手にし、霊媒となったコオロギを外へ逃し、大店へ向かった。

大店は天へ地へとの大騒ぎとなった。お嬢様はコオロギの帰還を喜び、主人と奥方が丁重に礼を述べた。

「どのような魔法を使って娘の宝とするコオロギを探し出したのか、まったく不思議です。今回のお仕事にお巡りさんはどれだけ汗を流されたことか、まず一番風呂にご入浴いただき、その間に宴会の準備をいたしたく思います。そして一献傾けながら、御苦労をねぎらいたく存じ上げます」

そしてゆっくり一時間朝風呂を楽しみ、終わると宴会が始まった。

やがてなぜコオロギが天国へ向かったのか理解するところとなった。

主人は訴えた。

「わたくしの故郷は貧しい寒村で、食べるものに困っていました。科学によると人間は糖質、脂質とタンパク質が必要栄養源です。我が故郷ではタンパク源の入手さえ難しい有様でした。そこで昆虫食が進み、コオロギによって腹を膨らます有様です。

私は現今の世界を眺め、食に満たされた社会の様を憂います。そのためにお客様におすすめするのは、コオロギ食です。さあ、趣向を凝らしたお食事をどうぞお召し上がりください」

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

👉『箱船へいらっしゃい』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】妻に2週間も触っていない。太ももを触りたいし、キスをしたい。少しはいいかな、と寝ている彼女のスカートを上げて…

【注目記事】「どこにも行ってないよ」とLINEで嘘をつく妻。「やはり何かある…」頭の中は疑惑でいっぱいになり妻の車にGPSを付けてみると…