そんな会話をして2匹は天国へたどり着いた。天国では天の門番が待っていた。傍らに虫かごに入れられたコオロギがいた。
「非公式警察よ、御仏はすべてお見通しだ。話は上から伝え聞いている。このコオロギは自分の身の上を訴えたが、それは死を受けたあとの話だ。さあ、あの階段を下ると木のウロまで通じているから、外界へ出るがいい。それと疳の虫、お前はもとの赤鬼の腹の中に帰るのだぞ」
そうして外界への帰還となった。お嬢様のコオロギは複雑な心境のようである。
なぜ天国へ向かい、なにを訴えようとしたのか口を割らないのだ。
しかし家庭にはさまざまな事情がある。深追いをしないで、身柄を大店のお嬢様のもとへ戻せば自分の仕事は終わりなのだ。
天国と地獄の分かれ道にたどり着くと、疳の虫とお別れになった。
「いろいろありがとう。君のおかげで仕事を済ますことができそうだよ」
そう礼を言うと疳の虫はテレたようだ。
「自分の居場所へお戻りよ。仲間が待っているよ」そこで疳の虫とは別れた。
そしてスズキ青年は、木のウロから出てお嬢様のコオロギとともにまず自宅へ向かった。
もう夜明けだった。試験管に入れられた茶色い薬の効き目も終わることだろう。自宅のアパートメントにたどり着くと、自室へ郵便受けから入り込んだ。
ベッドにはスズキ青年の実体が息もせず眠り込んでいる。幽魂が抜けているのだ、死んでいるのも同然である。
お嬢様のコオロギを用意していた虫かごに収めると、そこで薬効が切れた。