ハミングアローは泣いた。大粒の涙を流している時でさえ、彼女は相手の瞳を真っ直ぐに見つめるのをやめなかった。自分の瞳の中にも、彼の中にあるような天の川の光があればいいのにと、彼女は思った。
ハミングアローに中国の昔の詩なんて知るいわれはなかったけれど、もしも知っていたなら、パパにこんなふうに言ったんじゃないかな。
永(なが)に
願わくは履綦(りき)のごとく
双(なら)び行き復(ま)た双び止まらんことを
彼女は詩を唄う代わりに口を閉ざした。父は勿論、父の言うことを聞きなさいと諭す祖母と母にまで、口をきかなくなった。初めの頃は彼女のほうが先に折れるだろうと誰もが思っていたけれど、ハミングアローは断じて折れなかった。
半年も彼女から無視され続けた祖母と母はしまいに泣き出し、特に祖母のほうは、余命幾ばくもない老体に鞭打たれでもしたかのように、ハミングアローの態度に痛み入ってしまったのだった。
「息子よ。頑なになるのはやめなさい。もしあの若者がすぐに死んでしまっても、彼には立派な叔父がいるではないか。スタンディング・ベアは私の子を娶ることになるが、あの立派な男のことだ。あの子を妻としてではなく、養女として大切に扱ってくれるだろうよ」
たった一人の孫娘を今や失いかけている老婆は、顔に刻まれた数多(あまた)の皺をゆゆしげに寄せて言った。
「お義母さん。あなたはどこまで分かっておられるのですか。ハミングアローの思慕の深さを……。あなたの言うような未来になればいいでしょう。しかしあの子は、夫になったドゥモが死ねばきっと自分も死にます。あなたはあの子を殺そうというのですか」
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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