【前回記事を読む】ミャンマーの市場で出会った、得体の知れない黒い肉…よく見ると、焼き芋くらいの大きさの肉にはしっぽがあり…
第1章 最後のフロンティア
白骨街道
ゾミ君が「日本人を連れて来た」と言うと、そのお婆さんは飲み物とともに、これを見てとばかりに何かを抱えて運んで来た。それは、錆びた旧日本軍の鉄兜だった。
「これは、昔、助けてあげた日本の兵隊さんから貰った。今も宝物」
お婆さんの言葉をゾミ君が通訳してくれた。
「この家の裏手の山に日本兵が隠れていた場所が今もあります。見たいですか?」
僕たちは、ゾミ君の案内でその山に向かうことにした。行ってみると、そこは国立公園かと思うほど広大な森林だった。
ゾミ君の案内で草や枝をかき分けて湿原のような獣道を歩いていくと、急に開けた場所に出た。そこには木材を弦のようなもので結び付けて組み上げた小屋があった。荒れ放題の状態で人は住んでいないようだが、高床式の床から錆びた鍋がぶら下がっていた。
「昔はここに日本の兵隊さんがいたと聞いています」
「どれくらい前のことなんでしょうか」
「さて、あのお婆さんは私の妻のお婆さんです。彼女が幼かったころの話だそうです。ゾミ族はキリスト教徒でも人が死んだ後の骨は大事にします。私たちは昔から日本人の骨を埋葬してきました」
八十年近く前のことだ。政治的な状況は違っても、見渡す限りの大自然はきっと変わらない様相だろう。
特に、雄大な夕日に照らされて美しいシルエットを見せるパゴダは、遥々日本から戦争に来た兵士たちに自問させたのではないだろうか。
自分たちは、こんな平和な場所に銃を担いで何しに来たのだろうかと。