日本ではアニメにもリメイクされているので、違ったかたちで知る人も多い。猫は家畜ほど役には立たないし、犬ほど存在を主張しないが、暮らしの中で家族の一員として共存している。

我が家に拾われた猫も、尻尾の曲がったどこにでもいそうな和猫で、だれにでも擦り寄る愛嬌もの。長靴ははいていないが、人の足音と声を聞き分け、まん丸な目と甘え声で餌をねだる。おかげで拾われた当初は狐顔だったが、いまはまるまると太って二重顎のパンダ顔になった。

柔らかな毛を撫でると、ごろごろ喉を鳴らす。猫を膝に抱く人間のほうがしばし幸せな気分に浸れる。お城やお姫様よりも、ささやかな和みをもたらしてくれる、何の変哲もない猫がいい。

(二〇一一・十)

密度

空模様が、雨から雪へと変わる。雨粒は冷たく頬を打ち、衣服を濡らすが、雪はふわふわとして、六角の結晶が美しい。同じH2Oなのに、固体と液体とではまったく別ものだ。

水は、約4℃のときが一番重い。その理由は密度が最大だから。水素結合の度合いによるというが、分子の世界の話なので科学者にお任せする。全面結氷した湖の底には、約4℃の水が横たわっていることになる。

毎朝の冷え込みの厳しい冬に、うっかり不凍栓を閉め忘れたために、水道管が破裂した。水道が凍るなどということは、温暖な所で暮らす人にとっては、想像もできないだろう。

最近、外国からの観光客が増えている。乗鞍でスキーを楽しんだという家族連れは、真夏のオーストラリアからやってきた。寒さに震えながらも、オーストラリアにはないパウダー・スノウに、大満足したという。

今までいろいろな旅をして、思い出もいっぱいできた。時間がたつと記憶は薄れ、忘れてしまう。が、旅先で出会った人の親切や、困ったときに救われたことなどは、いつまでも覚えている。

ずいぶん昔だが、閉館間際に駆け込んだモスクワの博物館で、それまで出会ったロシア人ならもう閉館だと冷たくあしらうところを、年配の女性が親切にも閉じた鎖をもう一度開けてくれた。帰り際には、小窓から手も振ってくれ、いまだにその笑顔が忘れられない。

思い出も密度の濃いものであれば、記憶の底に深く刻まれる。

(二〇一四・一)

 

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