【前回記事を読む】玄関に簀子(すのこ)が置いてある。靴はどこで脱いだら良いの?
第二章 洋の東西
薔薇
バラは古代ギリシャローマ時代より香油の材料として利用されてきた。
美の女神アフロディテを象徴するものとして、一四八五年作ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」にも描かれている。
十六世紀シェークスピアの時代、ロミオとジュリエットの中で、「バラはどう呼ばれようとも、よい匂いがする」と表現される。
そして一九一三年に発表されたガートルード・スタインの詩は、言葉遊びともとれる抽象的な表現で、薔薇を詠った。A rose is a rose is a rose is a rose.
宮廷画家ルドゥーテの描く薔薇を鑑賞する。植物図鑑さながらの精緻な薔薇たちは、野生種の一重のバラから八重咲きの可憐なもの、あるいは牡丹のような百弁の大輪もあれば、色もピンク、赤、黄色、白と様々。
中には実も描かれているものもあり、別名ドッグ・ローズは、根が狂犬病に効き、実(み)はソースにし、ローズヒップティーとして飲用されるという。
Blue rose(青いバラ)は、「あり得ないもの」不可能の例えだった。青色色素を持ち得ないので、実際に青い薔薇は存在しないはずだった。が、昨年ついにウィスキーで有名な会社が、パンジーから抽出した青色色素デルフィニジンを花弁に蓄積させることに成功した。遺伝子組み換え技術の賜物だという。
品種改良の長い歴史の中では快挙なのだろうが、薔薇はやはり赤かピンクがバラらしい。
(二〇一〇・三)
『長靴をはいた猫』
ヨーロッパに伝わる民話を十七世紀のフランス詩人シャルル・ペローがまとめたものの中に、『長靴をはいた猫』がある。十九世紀になり、ドイツのグリム兄弟がグリム童話にも収録した。寝物語に読んでもらったか、図書館から借りてきて自分で読んだのか、記憶は定かではないが、猫好きには深い印象を残している。
粉挽き職人の遺産として、長男には粉挽き小屋、次男にはロバ、そして三男には猫が一匹残される。嘆く三男に、猫は長靴と袋をくれといって、ウサギを捕獲して王様に献上する。その後も猫が知恵を働かせ、何もなかった三男に、お姫様と豪華な城を手に入れる幸せな運命をもたらすというもの。