【前回の記事を読む】父の再婚相手からの陰湿ないじめ…誕生日プレゼントはゴミ箱に捨てられ、テーブルで食事できるのは父がいる時だけ。
サイコ2――死の予言者
ひとみの眼光が急に翳ったかと思うと、彼女はバッグからナイフを取り出し、貴子めがけて突進した。刑事達は足立を押さえるのにかかりきりで完全に油断していた。しかし、貴子の前に賽子が素早く割り込んだ。
「賽子さん!」
麻利衣が叫んだ。
「どかないとあなたも殺す!」
ひとみがナイフを前方に鋭く突き出した時、賽子は悠然と右の掌をかざすようにナイフを持つひとみの右手に向けて突き出した。
「うっ、どうして?」
ひとみが必死に力んで左手も使って右手を前に突き出そうとしても、逆に引っ込めようとしても空中に張り付いたかのように動かなくなってしまったのである。そのうちに鍬下が走って来て、ナイフを彼女から奪ってしまい、代わりに手錠を掛けた。
「小佐々ひとみ、殺人未遂で現行犯逮捕だ」
「本当に完敗ね」
「ひとみ、どうして……」
千晶が眼に涙を浮かべながら呟いた。ひとみと足立が刑事たちに連行されて行く時、賽子が背後から声をかけた。
「一つ質問がある。小佐々氏はおまえがこうなることを予知して悩み、苦しんでいた。だから最後の夜、おまえと部屋で会っていた時に、家族を憎しんだり、恨んだりしないように忠告したはずだ。それはおまえの胸に響かなかったのか?」
ひとみは立ち止まって、しばらくしてから振り向いて言った。
「私にも質問があるわ。父がもし予知能力者だったとしたら、再婚によって私が苦しむことを知っていたはず。それなのにどうして見て見ぬふりをして離婚しなかったのかしら。
知っていても変えようとしないのであれば、地球温暖化で人類が滅ぶのと一緒ね。人間の運命に予知なんてほんとは関係ないんじゃないでしょうか?」
彼女は再び鍬下に引っ張られて行った。