2週間後の土曜日、賽子の事務所を鍬下が訪れていた。千晶もその場に居合わせていた。

「鍬下さん、どうしてわざわざ事件の経過を説明しにここまで来てくださるんですか? 普通刑事さんってそこまでしませんよね」

麻利衣が疑問を呈した。

「君たちにちょっと興味があってね。河原さんは?」

麻利衣は白いピラミッドを無言で指差した。賽子は先程からその中で瞑想中であった。

「崇夫氏の病理解剖を確認したが、やはりバイパスが閉塞して心筋梗塞を起こしていた。それが死因で間違いないそうだ。それから遺体からも彼が飲んでいた水からも毒薬物は検出されなかった」

「じゃあ、あの予言は本物だということですか? そんなまさか、信じられない……」

「賽子さんの助手なのに、未だに超能力を信じてないの?」

千晶が言った。

「当たり前でしょ。きっとただの偶然か、それとも何かのトリックがあるに違いないよ」

「でも、賽子さんが、ドアの鍵を触れるだけで開けたり、ひとみを動けなくしたのを見たでしょ」

「あれならあの後、ネットで調べたのよ。あのタイプの内鍵はカードをドアの隙間に差し込んで、ラッチボルトを引っ込めてドアノブを回せば簡単に開く。

マジシャンみたいに器用な人なら、一瞬で開けたかのように錯覚させることもできたはず。ひとみさんだって、賽子さんがあまりにも堂々としているから急に怖くなって動けなくなっただけだと思う」

「相変わらず頭が固いのね、麻利衣は」

「は? まさか千晶、医者のくせにあんな非科学的なまやかしを信じてるんじゃないでしょうね」

「さあ。でも私、賽子さんの言うことなら信じるわ」

千晶は賽子にすっかり感化されてしまっているようだった。麻利衣は密かに溜息をついた。

「続きをいいかな。崇夫氏の顧問弁護士に確認したところ、彼は家族には全く内密に生前に全財産を世界中の恵まれない子供たちのために寄付してしまっていたそうだ。本宅も別荘も既に売却済みだった。おそらく河原さんが言うとおり、家族間の醜い相続争いを避けるためだったんだろう。だから貴子にも遺産は一銭も入らない」

「いい気味ね」

千晶が呟いた。

次回更新は2月13日(金)、21時の予定です。

 

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