【前回の記事を読む】死の数分前まで娘と2人きり、部屋で話していた父親…遺体から毒薬物は検出されなかったが、死因は…
サイコ2――死の予言者
「でも、どうして小佐々さんはひとみさんに遺産の全てを譲るなんて言ったんでしょう?」
麻利衣が言った。その時、白いピラミッドの中からヨガウェアを身に着けた賽子が現れた。
「小佐々氏は最後の賭けをしたのだ。全財産を譲ると言えば、彼女が溜飲を下げ、殺人計画を断念するかもしれないと。だが、彼女は遺産のことなどそもそも全く眼中になかったのだ」
「ひとみと足立は二人を計画的に殺害したことから、重い罪は免れないだろう」
鍬下の言葉で重い沈黙が訪れたが、それを破るように麻利衣が言った。
「ちょっと待ってください。じゃあ、あの遺書には一体何が書かれていたんですか?」
「それなんだが……」
鍬下は胸ポケットから折り畳んだ一枚の紙を取り出して、麻利衣に渡した。
「これは崇夫氏の遺書のコピーだ」
遺言書
遺言者 小佐々崇夫は本遺言書により以下の通り遺言する。
密室で殺人が起こるだろう。
それが全ての嚆矢だ。
神撰に用心せよ。
ハルマゲドンはそこまでやってきている。
最後の希望は河原賽子なり。
2024年7月13日
遺言者 小佐々崇夫
「何これ、全然遺書なんかじゃないじゃない。密室殺人って今回の事件のこと?」
千晶が呆れて言った。
「ちょっと待って」
麻利衣が言った。
「2024年7月って1年前よね。その頃どうして小佐々さんは賽子さんのことを知っていたの?」
「探偵事務所を探していて知ったのかしら?」
「それは遺言書ではない。予言書だ」
賽子がきっぱりと言った。
「予言書……」
「小佐々氏は最後の予言をしたのだ。彼の予知の範囲は1年以内。つまり、今年の7月までに世界の破滅が訪れると彼は予言したのだ」
「えっ」
麻利衣はさすがにぎょっとしたが、あと3か月で世界が滅ぶなんてあまりにも現実味がなく、到底信じられなかった。
「この『神撰』ってどういう意味ですか?」
千晶が訊いた。
「『神撰』は幼い超能力者たちを拉致・監禁・洗脳し、国際スパイや暗殺者に育成する国家の秘密組織だ。私も17歳までそこにいた」
「えっ」
皆驚いて言葉もなかった。
「小佐々氏の言うとおり、ハルマゲドンが近づいているようだな。これから神撰との血みどろの戦いが始まるだろう。皆、覚悟しておくんだな」
「覚悟って……」
その時鍬下の携帯が鳴り、彼は電話を取った。