【前回の記事を読む】自室にうつ伏せ状態で見つかった娘。取り乱した母親が抱き着き、心臓マッサージが中断されてしまい…
サイコ2――死の予言者
翌朝、貴子は病院から別荘に帰ってきた。レンタルの喪服に着替えてはいたものの、大広間の棺の前の椅子の背に体を預けだらしなく座り、頬は削げ落ちて、下顎は緩んで口は半開きになったまま、周りにくまができた目で虚空を見つめており、まるで廃人のようであった。
その前を鑑識課の捜査員たちが忙しそうに行ったり来たりしていた。
同じように喪服に着替えたひとみたちも同じ広間の椅子に座っていたが、彼らは二人の刑事から事情聴取をされていた。一人は五日市警察署の署員で、もう一人は警視庁捜査一課の鍬下だった。
「奇妙な事件が立て続けに起きると思ったら、またあなたたちですか。まさか、また超能力殺人だなんて言わないでしょうね」
「それが……」
麻利衣が申し訳なさそうに事件の顛末を全て彼に説明した。
「なるほど。今度は予告、いや、予言殺人というわけだ。小佐々直美さんと剛さんのご遺体は司法解剖に回っています。ところで、その島木華怜という占い師はどこに?」
「近くのホテルに泊まっていると思います」
足立が答えた。
「そうですか。それならせっかくですからこちらにおいでいただきましょうか」
「何ですって?」
ようやく正気を取り戻した貴子が声を上げた。
「あの人殺しをこの家にまた入れるなんて冗談じゃない! 刑事さん、あの女が犯人に決まっています。早く逮捕してください」
「あー、ただ死亡日時を予言したというだけではすぐには逮捕できません。やはり殺害の証拠がはっきりしないとね。個別に話を聞きに行ってもいいですが、人手も足りなくて、時間がもったいないですからね」
「それでは、私が連絡してきます」
貴子が不服そうな顔をするのを無視して足立が席を立って電話をかけに行った。
「私、あの時、直美さんの傍にいてあげればよかったかな」
麻利衣が千晶に言った。
「麻利衣のせいじゃないよ。でも、何で直美さんは自分の部屋に戻ったんだろ。それに二人の部屋のあの冷気は何? 二人は一体どうやって亡くなったんだろ。賽子さん、何か分かりますか?」
「私に分からないものなどない。だが今はまだそれを答える時ではない」
「ケチだねー」
麻利衣が顔をしかめて言った。しばらくすると、昨日の漆黒のドレスをそのまま喪服代わりとして身に纏った華怜が姿を見せた。彼女は粛然と貴子の正面に立ち深々と頭を下げた。
「お二人のご冥福をお祈りします」
「何よ、この人殺し!」
貴子はやにわに立ち上がると華怜の両肩を掴んで棺に押しつけた。
「やめてください」
「奥様!」
足立が貴子をようやく引き剥がし、椅子に座らせると彼女は再び嗚咽し始めた。
「島木さん、僕は警視庁捜査一課の鍬下という者です。あなたが小佐々崇夫さん、直美さん、剛さんの死亡日時を正確に予言したというのは本当ですか?」