ちなみに、何らかの内容を思い出し(想起)、それについて何らかの内容を考えれば、定義的にワーキングメモリーを使っていることになる。思考することにおいては、多くの場合にワーキングメモリーが使われると思われる。

ワーキングメモリー(作動記憶)という用語は、「記憶、メモリー」という意味で分類されているが、考える対象を意識の中で把持しながら、それに対していろいろと思考していくということで、思考システムの一つともとらえられるだろう。

第一次運動野

次に運動野である。第一次運動野は運動指令を生成する。第一次運動野の細胞は、脊髄を通って、体を動かす指令を直接的に筋肉に送っている。第一次運動野のニューロンを、電極を使って電気刺激すると、そのニューロンの支配する領域に対応した体の部分(筋肉)が動く。

この運動野の細胞を刺激した際、体のどこの筋肉が動くのか、つまり運動野の神経細胞と体のどこの筋肉が対応しているのかというのを示したのが図3である。

 

このように、運動野の神経の局在と、それによって動く体の筋肉とが対応しているという考えは「身体部位再現説」といって、運動野にあたかもホムンクルス(脳の中の小人)がいて、個々の筋肉を動かしているような印象とたとえられる。

これはそれぞれの筋肉に対応したニューロンが運動野にあり、あたかも運動野にそれぞれの筋肉が再現されているような状態という意味で「筋再現説」ともいわれ、運動野のニューロンと筋肉とが1対1の関係になっているという内容となる。

これによると手の領域や言語に関連する唇と舌の領域が広く、その面積は動きの巧緻度に比例していて、複雑で細やかな動きを必要とする領域には、それに対応して多くの関連したニューロンがあるということと考えられる。

しかしこの「筋再現説」はその後否定され、「運動再現説」が登場した。これは、運動野には、運動神経に対して筋肉そのものが1対1に対応しているのではなく、筋肉の動き、とくに複数の筋肉の運動パターンの組み合わせが再現されているというものである。


(1)『人間の運動学 ―ヒューマン・キネシオロジー』

宮本省三 (著)、 八坂一彦 (著)、 平谷尚大 (著)、 田渕充勇 (著)、 園田義顕 (著)

協同医書出版社 2016年

(2)『連合野ハンドブック 完全版:神経科学×神経心理学で理解する大脳機能局在』

河村満(編集)

医学書院 2021年

 

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