【前回記事を読む】人間の“脳”は外部からの刺激だけでなく、「固有感覚(深部感覚)」からも情報を受け取っている?
I 動きと意識のダイナミクス
脳の領域と機能
空間内における座標軸の認識というのは、左半側空間無視(左側の空間情報を利用できない)という現象で理解できる。これは座標軸を無意識に認識していることを表しているのだろう。
たとえば花瓶の花を見て、それを模写する課題において、絵の全体像を認識はしているのに、それを書く場合には右半分しか模写できないということは、花瓶のある空間では左側も右側も認識できているのに、書くという行為のためにそれを身体中心座標に変換した際には、その左側の情報を動きに利用できなくなるという現象と思われ、外部座標と内部座標の認識、外部座標から内部座標への変換という過程が無意識に行われていることを反映しているものだと思う。
下頭頂小葉は、角回、縁上回を含む。ここは、体性感覚、視覚、聴覚という多感覚を統合する最高中枢であり、これらの感覚の情報変換や、言語や意味の概念化がなされているのだろう。
多感覚の統合とは、体性感覚、視覚、聴覚の情報は、それぞれ違う感覚受容器から入り、感知されるが、実際にはそれらの内容は一つの事象であり、それぞれの感覚内容が独立して存在しているわけではないので、これらの感覚が一つに統合されて認識される必要があり、頭頂連合野がこの多感覚統合を行っている中枢という意味となる。
また前頭葉のブローカ野(言語中枢)とも連携していて、多感覚統合された内容に対してそれを言語化(いわば概念化、イメージ化ともいえる)する機能もあると考えられる。これは、外部世界(物体)と内部世界(身体)との関係性に対する認識、理解にも関係している。
また、動作や行為においては、自分の動きと、それによって実際に引き起こされた感覚とが、一致していなければならない(感覚運動マッチング)。これに関しても下頭頂小葉が機能していると考えられる(1)。
また下頭頂小葉は、道具使用、パントマイム、顔の表情の認識、着衣動作などにも関係しているといわれる。また下頭頂小葉を直接電気刺激すると、動こうとする欲求(行動の主体感)が生じることがわかっている(2)。
前頭葉には、前頭前野、一次運動野、前補足運動野、補足運動野、運動前野がある。
前頭前野は思考の中枢であり、ワーキングメモリー(作動記憶)機能もある。さまざまな思考(評価、比較、抽象化、概念の形成、階層化、分類、ラベリングなど)がなされ、動作や行為に関しては、行動計画や行動選択などの意思決定にも関与する。