【前回の記事を読む】10年前に母を亡くして、父は家政婦と再婚した。母になった家政婦は私に冷たく当たるようになり、家に居づらくなった。
サイコ2――死の予言者
夕食は全員大広間に集まってとることになっていた。崇夫、ひとみ、千晶、麻利衣、賽子は同じテーブルで、貴子ら三人は別のテーブルに陣取った。
2人の家政婦が次々と豪華な料理やワインを給仕し、麻利衣もこの時ばかりは幸運に感謝した。足立は秘書というよりは昔の執事みたいな扱いなのであろうか、恭しく部屋の片隅に立って控えている。彼はエントランスのすぐ隣にある部屋に住み込みで働いているとのことであった。
「小佐々さんは一代でグループをここまで大きくされたんですよね。すごい商才ですね」
千晶が褒めると崇夫は照れ臭そうに頭を掻いた。
「いやあ、私はただ運がよかっただけですよ。若い頃は貧乏だったんですけど、株に興味を持って好きなのを買ってたらそれが値が上がってね。それを元手に会社を立ち上げたんです。それからも自分の力というよりは、運が味方してくれたようなもんです。人生で勝利するためには実力よりもやっぱり運が一番大事ですね」
では、実力も運もない自分は一体どうしたらよいのかと麻利衣は独り嘆息した。
「ひとみさんのお母様はどんな方だったんですか?」
千晶はひとみに聞けばいい質問をわざわざ崇夫に訊いた。彼は遠くを見るような眼差しをして屈託なく答えた。
「あれは素晴らしい女でした。貧乏な頃から私に尽くしてくれてね。彼女はいつも言っていた。笑って暮らせさえすればお金なんて要らないと。本当に欲のない人間だった。裕福になった後も贅沢もせず、誰にも分け隔てなく親切にしていた。
彼女が病で亡くなった時は本当に悲しくて何もかも終わってしまったかのように感じた。どうしてもっと彼女をいたわってやれなかったのかと今でも後悔しています」
皿が片付けられ、家政婦が帰宅すると、崇夫はグラスの赤ワインの残りを一気に飲み干し、全員を見渡して言った。