【前回の記事を読む】「父はきっと騙されている」…占い師を家に入れてから、土地や株を売り払って現金化した父。今夜大事な話があるという。
サイコ2――死の予言者
ひとみは浮かない顔で三人を連れて廊下を歩いていった。
「さっきのは後妻の貴子さんと連れ子の直美さんと剛さんです。私の実の母、亜紀は10年前に病気で亡くなりました。貴子さんは当時うちの家政婦をしていたんです。
父は母をとても愛していましたが、母が亡くなった後は貴子さんと親密になって再婚したんです。でもあの人たちは私に冷たく当たるようになって……それが嫌になって大学進学後から私は家を出てしまったんです」
「確かに意地悪そうな顔してた。シンデレラの継母みたい」
千晶が顔をしかめて言った。
「ここは家の中央にあたる大広間です」
広間には高級な絨毯が敷き詰められ、古風なテーブルやソファや椅子が並べられていた。北側の壁には古めかしい振り子時計が掛けられ、その下には電気式の暖炉が設置されていた。
その他の壁には有名な画家による絵画が飾られていて、片隅には1800年代のアンティークピアノも置かれていた。
「父は自分が好きで集めたコレクションも全部この家に移してしまったんです。それもほとんど売り払ってしまったみたいです。この大広間の西に1部屋、東に2部屋あります。貴子さんたちがそこを使うみたいです」
大広間を北に抜け、東西に走る廊下に出ると、その北側にいくつも部屋が並んでいた。
「西側の一番端の部屋が父の部屋です。その隣に大きな浴室があります。その東側に3つ部屋があります。皆さんは一番東側の部屋を使ってください。私は2つ隣の部屋を使います。部屋は全部外鍵はありませんが、内側からかけられますので」
「ありがとう。じゃ、また後でね」
千晶が礼を言って部屋に入ろうとした時、隣の部屋のドアが開いて中から黒いロングヘアの細い目をした女が出てきた。
スタイル抜群で黒いドレスを着て豊満な胸にドリームキャッチャーのペンダントをかけている。女は立ち止まって四人をじろじろと見まわしていたが、ふと賽子に目を留め、無言で睨みつけた。賽子の方も黙って相手を見返した。
「こちらが島木華怜さんです。華怜さん、こちらは私の友人たちです」
ひとみが紹介すると華怜は慇懃に頭を下げた。
「島木華怜です。旦那様のご依頼でこちらに住み込みで専属の占い師をさせていただいております。占いと言っても私の場合百パーセント当たりますので、予知能力と言った方がいいかもしれませんが」
「予知能力……」
麻利衣は絶句した。
「今晩も旦那様から未来予知をするよう言いつかっております。悪い未来でなければいいのですが。それではまた」
そう言うと彼女は廊下を歩いていった。その背中を見ながらひとみが言った。
「ああいう感じの人なんです。予知能力なんて信じられません。きっと父を騙しているんです。父が早く目を覚ましてくれればいいんですが……」
賽子は黙って華怜の後姿を見つめていた。