二人は店内のテーブル席に腰かけた。
「えっ、じゃあほんとにあそこで働くことにしたの?」
千晶が驚いて言った。
「うん。まあ、犯人を当てたら私が助手になるって賭けだったからね。と言っても向こうが一方的に決めたことなんだけど。でも私、あの人のことをもう少し調べてみたいと思ってるの」
「調べるって何を?」
「ああ……あっ、そう言えばご両親や鍋本さんは大丈夫だった?」
「大丈夫よ。一時は警察に疑われて大変だったけど、すぐに疑いが晴れたからね。でもまさかパパが今でも私のこと監視してて、良祐のことも知ってたなんて……。
お陰でひどい親子喧嘩になっちゃって彩斗が間に入ってくれなかったら今頃絶縁してたかもしれない。それにしてもあの刑事さんがほんとに犯人だったなんてね。あの河原賽子って人、ほんとに超能力者なんじゃない?」
「え? まさか……。いや、超能力なんてこの世に絶対あるはずない。きっと何かトリックがあるのよ。私はあいつが偽超能力者だってことを突き止めてやろうと思って助手になるのを受け入れたの」
「そうなの。じゃあ、それを突き止めたらまた、医師を目指すのね」
「え、うん、まあ……」
「それじゃ、探偵助手であるあなたに初めての仕事を依頼するわ」
「仕事?」
「私の高校時代の友人に小佐々ひとみって子がいるんだけど、お父さんは小佐々グループの元会長で今は引退して檜原村の別荘で独り暮らしをしているそうなの。
それが少々変わり者らしくて、最近どこから連れてきたのか謎の占い師の女と同居し始めて、その人の占いにどっぷりはまってしまったらしいの。その人の指示で財産整理も始めたらしい。
それで今度の土曜日、大事な話があるからって家族全員をその別荘に呼び寄せたそうよ。ひとみはその占い師が何か良からぬことを企んでいるんじゃないかってすごく心配してるの。それでこの間私に相談があった時、あの河原賽子のことを思い出したわけ。
あの人ならそんなインチキ占い師を追い払ってくれるんじゃないかと思って。
この後彼女のマンションに行くつもりだったの。どう? 私も行くから賽子さんと一緒に小佐々家の別荘に行ってくれない?」
「インチキ占い師対インチキ超能力者の対決になるけど、まあ彼女がよければ……」
「よかった。じゃあ、一緒にお願いしに行こう」
「あ、ちょっと」
呆れる麻利衣を置いて千晶は早速席を立った。
次回更新は1月28日(水)、21時の予定です。