少女は軽傷を負っていたものの、生命には全く問題がなかった。高度12000メートルの上空で大爆発を起こした航空機から生き延びるなどまさに奇跡の少女と当時マスコミに騒がれた。しかもその少女こそ、飛行機が落ちると『予言』した少女だったんだ」
「そんな話が……でも、全然そんな話聞いたことありませんでしたよ」
「この話には続きがあるんだ。マスコミは彼女を『超能力少女』と呼んでその後引き取られた児童養護施設にまで追い回した。心配した施設の職員は役所に相談して彼女の行方が誰にも分からないようにした。
それで一度は落ち着いたんだが、3年後、彼女は再び脚光を浴びることになった。2006年4月19日、TVのスペシャル番組に彼女は突如登場した。ただし顔は仮面で覆い、ボイスチェンジャーで声も変えていたが、奇跡の少女本人で間違いないと言った。
その時、彼女の傍には一人の男がいた。超心理学の研究者を名乗り、彼女と共に暮らし、彼女の能力を研究していると言った。彼女の能力を世間に実証するためにTV番組に出ることを決意したと言った。
番組は彼女の能力を試すためにいろいろなテストを試みたが、その結果はスタッフ及び視聴者を落胆させるようなものだった。マスコミは今度は少女自身より、そのインチキ学者に注目した。
彼が北海道美瑛町トムラウシ山中に『国際超能力研究所』なる施設を無許可で建設し、そこにどこから集めたのかも不明な数人の子供たちを少女とともに収容し、超能力研究と称し、日々、非人道的な人体実験を繰り返していたというショッキングなニュースが報道された。
その後、彼は逮捕され裁判で無期懲役の実刑判決となった。当時マスコミはその少女を含めた子供たちに関し調査取材を試みたが、政府から圧力が加わり徹底的に妨害された。子供たちの人権と将来を守るためというのが建前だったようだが、そのせいで少女を含め子供たちのその後の行方は誰にも分からなくなった。
2015年、研究者は獄中で突然死した。死因は不明だった。その後、この事件のことを検索しても中国で天安門事件が検索できないように何も出てこなくなった。
それ以降メディアもこの事件に関して一切取り扱っていないから、君が知らないのも無理はないと思う。僕はこの事件に関して政府が何か知られちゃまずいことを隠しているんじゃないかと前々から思っているんだけどね」
次回更新は1月27日(火)、21時の予定です。