【前回の記事を読む】21歳で突然自ら命を絶ってしまった娘。残された携帯を見て、何に苦しんでいたかはすぐに分かった。
サイコ2――死の予言者
新宿署の取調室で鍬下と羽牟が向かい合っていた。羽牟は髭が伸び、少しやつれた様子で取り調べに神妙に応じていたが、不意にこんな質問をした。
「ところであのお嬢さんたちはどうしてるんだい?」
「お嬢さん?」
「河原賽子(かわはらさいこ)と那花麻利衣(なばなまりえ)のことだよ」
「ああ。那花は河原の助手になったようですが、それ以外は何も知りません。それがどうかしたんですか?」
「ああ、少し気になってね。確かにソル・エクスプレスの作業員が逮捕されれば僕もすぐ捕まるだろうとは思っていたが、まさかあの時点で僕が犯人だと言い当てるとは思いもよらなかった。ハムがマークしていることからしてもやっぱり彼女には何か特殊な能力があるんじゃないだろうか」
「ちょっと待ってください。羽牟さんまであのインチキ超能力者のことを信じるって言うんですか? 彼女は羽牟さんを超能力者だと言ったんですよ」
「まさかそんなことまで知られていたなんて……」
「え?」
「なーんて冗談、冗談。僕が超能力者に見える? そんな力があれば、作業員を犯罪に巻き込まずに済んだんだけどね。でもね、それで思い出したことがあったんだ」
「何ですか?」
「『奇跡の少女』事件って聞いたことあるだろ」
「奇跡の少女……いいえ」
「そうか。今から22年前の話だから君はまだ子供だったか。
2003年3月16日、ホノルル行きの旅客機が成田空港を離陸する予定だったが、出発時刻よりだいぶ遅れていた。理由は乗客のうちある一組の夫婦の3歳になる娘が飛行機に搭乗するのを頑として拒否したからだ。
初めのうちは飛行機が怖いんだろうと思って、両親が職員と一緒になだめすかしていたんだが、少女が飛行機に乗りたくない理由を言った時、彼らはとても驚いた。
彼女は『飛行機に乗るのが怖いんじゃない。この飛行機は墜落してみんな死んでしまうから、次の飛行機で行きたい』と言ったんだ。
でも両親はとても子供の戯言のためにせっかくの旅行を遅らせる気にはなれず、無理矢理少女を連れて機内に乗り込んだ。そして離陸して数時間後、彼らの航空機は12000メートルの上空で空中爆発した。
後から分かった事故原因は、燃料タンクの傍にある電気配線がショートして、燃料タンク内の気化燃料に引火して爆発したというものだった。
機体は空中分解して海上に墜落し、乗員乗客520名は全員死亡したと思われたが、航空自衛隊の航空救難団は海上に漂う機体の破片に一人の少女がしがみついているのを発見し救助した。