【前回の記事を読む】「いつ、そういう行為をした?」両親は犯罪者に向ける目で僕を見ていた。僕と彼女なら子供だって育てていけるはずなのに…
第二章
ふう、と一息つく。それと同時にどっと疲れが押し寄せてくる。腰も首も肩も目も痛い。
過去の実体験から感情とその感情が芽生えた原因について振り返ってみると、自己分析ができるとのことだったが、僕の場合はあの頃の出来事を振り返ることがあまりに苦痛のようだ。
そのときの感情だなんて、冷静に振り返れるわけがない。これまでずっと思い出さないように蓋をしていたが、まさか三年以上の月日が流れてもなお負担を感じるほどの体験だったとは思っていなかった。
たしかにこの頃のことが今の自分を形成していることに間違いはないが、それゆえに思い出すのは禁断の行為に近いといえる。もう少しリラックスして思い出す方がいいのではないか。
スマートフォンを開くと、机に向かってから二時間が経過していた。もう十九時になる。そろそろ夕飯の支度をするとしよう。そう思ったとき、メッセージを一件受信していることに気づいた。
[やっほー! 今日はありがとね♪ よかったら、今度は一緒にカフェに行かない? 可愛いお店があるんだよー!]
前園さんからのメッセージだ。今日僕が前園さんと一緒に行動したのは、就職活動のためにすぎない。勘違いをしてもらっては困るが、とはいえこの内容に触れずに返信するのも失礼だ。少し考えて、メッセージを送信した。
[僕はあんまり可愛いカフェに行っても、面白い反応はできないし退屈だと思うよ]
前園さんはSNSで共有できるような友達とカフェに行きたいのだろう。これで上手く断れたはずだ。スマートフォンを充電器に差し込むと、ピロンとメッセージの到着を知らせる通知音が鳴った。
[じゃあ私がカフェの楽しみ方を教えてあげるね! お楽しみに!!!]
ダメだったか。少し落胆し、スタンプを送信すると、夕飯のカップラーメン作りに入った。
出来上がったカップラーメンを啜りながら、前園さんのことを考える。彼女はなにを考えているのだろうか。あまり深い関係にはなりたくない。
遥香の笑顔が頭に浮かぶ。さっきの自己分析のせいで、遥香のことが容易に出てくるようになってしまった。できる限り思い出さないようにしてきたこの三年間は、いったいなんだったのだろうか。
「遥香、元気かな……」
ふと声に出している自分に気づき、慌てて口を閉ざす。