【前回の記事を読む】「彼女さん、妊娠しているんだぞ」(……え? 妊娠?)父と母は、まるで僕が危害を加えた犯罪者のように、ひたすら謝っていた
第一章
「お前は、緑川遥香さんと付き合っていたのか?」
「うん」
「そうか。いつ、そういう行為をした?」
なぜそんなことを両親を前にして言わなければならないんだ。顔を上げると、ますます答えられなくなりそうだ。両親が僕に向ける目は我が息子を見るそれとは異なっていた。たまにニュースで流れる残忍な事件を起こした犯人について議論するときのような、犯罪者に向ける目だった。
「九月の初めくらい」
「そうか」
それからも父と母は、耳を塞ぎたくなるような問いをいくつも投げかけた。どうしてそんなことを?と思うような問いばかりだったが、僕はすべてに正直に答えた。今の僕には答えることしかできないから。
そして父と母は最後に残酷な言葉を口にした。
「お前はもう、遥香さんと会うな」
「……え?」
「そうよ、絶対に会っちゃダメ」母まで応戦する。
「なんで……、どうして……?」
「お前、わかるだろ。自分がしでかしたことの大きさを」
やはり世間の大人はなにもわかっていない。父も母も、遥香の両親も。僕と遥香のことをなにも知らないくせに。僕と遥香がどれだけお互いを好きで、尊重して、愛し合っていたのかを、なんにも知らないで簡単に結論づける。
どうして、僕は彼らの言いなりにならないといけないのだ? 僕たちが成人していないから? 成人していたらよかったのか? そんな程度なのか? あともう少しで成人するというのに? 国が決めた年齢のせいで、僕らは愛し合っているのに離れないといけないのか? そんなこと、間違っている。
僕と遥香なら絶対に幸せになれるはずだ。子供だって育てていける。それなのに僕らが犯罪者扱いをされて、絶対にネグレクトに走るであろう、不良みたいな大人が祝福されるのか? 年齢のせいで? そんなこと、納得できない。できるわけがない。
でも、僕のそんな声は届かなかった。僕が声を上げなかったからだ。心では強く疑問を持っていたのに、実際には行動できなかった。恐れたのだ。これを言ったら遥香の両親にまた怒られてしまう。怖い、と思ってしまった。
気づいたときには、遥香は病気で入院することになっていた。妊娠が周囲の生徒に気づかれないようにするためらしい。どこの病院かは知らない。遥香とは音信不通になってしまったからだ。