【前回の記事を読む】他の男子から告白されて「もう会えない」ときっぱり断った彼女…実は入院中で、お腹には僕の子が宿っていた。
第三章
「早川さん、彼女の家の場所、知らない?」
遥香に謝りたいと思った強く思った僕は、早川にそう訊いていた。実をいうと、付き合っていて恥ずかしながら、僕は遥香の家の場所を知らない。僕の家とは反対方向にあるせいで、だいたいの場所を知ってはいるものの、正確な場所までは知らなかった。
まだ実家に住んでいるのだろうか。きっと僕が行ったら、彼女のご両親の怒りを買って追い返されるだろう。でも、そうなってもいいから謝りたかった。僕が奪った遥香の時間を取り戻すことはできない。だから謝ることしかできない。自分がスッキリするためではない。彼女のために謝りたいと、心から思った。
「そういえば、遥香の家、一回だけ行ったことあるよ」
「本当に?」
思わず前のめりになってしまう。
「うん、たしか高校時代に遥香と使っていた交換日記に書いてあった気がするんだ。今は無理だけど、帰ったら調べてみるね」
早川は遥香の家の場所を教えると約束してくれた。遥香が実家にいる保証はないが、これでかなり大きく前進できた。
早川と別れ帰宅した僕は、押入れの中を漁っていた。目的は一つ、卒業アルバムだ。実家を出るとき、ここに戻ることはないだろうという思いから、ある程度の荷物は東京に持ってきていた。おそらく、卒業アルバムもこの押入れの中に入っているはず……。
頭をぶつけたり、埃のせいでくしゃみをしたりしながらも、目的の物を探す。まるでタイムカプセルだ。やっとの思いで見つけたそれは、押入れのだいぶ奥の方にあった。
引っ張り出して埃を払ってから、自分の愚かさを知る。そうだ、僕はあの高校を卒業していない。手元にあるのは、転校した先の大した想い出もない卒業アルバム。なにをやっているんだと、自分にため息を吐く。
寒川という男子生徒の顔を拝んでやろうと思ったのだ。でも、それすらも叶わない。
ピロンとスマートフォンが音を立てる。メッセージを受信した通知音だ。誰からだろう。探し出したことと、それが無駄な行為だったことに気づいた疲れから床に座っていた僕は、その先を見る。手を伸ばせば届きそうな距離だ。立ち上がりもせずに、スマートフォンを手繰り寄せると、思わず「お!」という声が漏れた。
それは早川からのメッセージの通知を知らせる音だったようだ。
[遥香の家の場所わかったから送るね! もう引っ越してるかもしれないし、実家出てるかも。だとしたらごめんね]
なにも問題はない。これだけでも十分だ。
[ありがとう! 助かったよ]
早川に返信をして、地図アプリでその住所を検索する。