冗談を言って笑いに変えたが、確かに体型の変わりようには驚いた。その上、まだ四十代なのに白髪が目立つ。顔の皺も深い。苦労が多かったのだろうか。
唯一、声だけが昔と変わらぬ澄んだソプラノで、その明るい声を聞いているうちに、目の前の順子と昔の順子は次第に統合されていった。
病室に入ると、順子はニコニコしながら透に挨拶した。
「透くん、初めまして! お母さんのお友達の倉嶋順子です。今日の調子はどう?」
透はじっと順子を見ている。
「今日はね、お母さんをちょっと借りるよ。会うのが二十年ぶりだから。たくさん話すことがあるの。いい?」
透はうなずく。
「ありがとう! 君と握手していい?」
そう言って順子は手を差し伸べた。が、透がうなずくまでは触ろうとしない。
「いいかな?」
透がうなずいた。順子は透の右手を両方の手でじんわりと包み込む。
「よく頑張ってるね。すごいよ、透くん。お母さんの自慢の息子だね。お母さんも頑張ってるよ。お父さんも応援してるよ。だから大丈夫。大丈夫」
順子は透の手をさすりながら、透を「病人」ではなく一人の人間として相対し、意思の疎通ができることを確信して笑顔で語りかける。まさ子は胸が熱くなった。
次回更新は1月23日(金)、14時の予定です。
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