大人達も子供を出汁にして便乗し、その景色を楽しむ人も多かった。

仙一は、年末の越前へ帰郷の家族の為の土産が第一の目的だった。

尚と一恵、それに母への土産は頭の中ではもう決まっていた。

店とて碌にない郷で一番喜ばれるものはやはり衣服だった。

しかも、越前の住人にとっては京都は大都会で、丸物百貨店での洋服は、特に嬉しい一級のお土産だった。毎月の仕送りでそれ程の余裕もない仙一。

しかし、今年は弟達にはセーター、母にはカーディガンでいいのがあったらと考え ていた。

後1ヶ月程の帰郷までに、買い揃えておかなくてはならない。

今日は、そのお買い物の当日。

家族のみんなが、仙一のそのお土産を楽しみに待っている筈。

仙一も、みんなの喜ぶ顔を見るのが今から楽しみなのだ。

電車の揺れに任せて窓外を眺め、一夫のはしゃぐ話を耳にしながら、仙一の心は窓外の景色がやがて知らぬ間にあの日の目眩く記憶に遡り、その事に想いを馳せていた。

市電は丹波橋を出ると、棒鼻、七瀬川、勧進橋と過ぎ、大石橋から、やがて国鉄の陸橋を跨ぎ塩小路高倉を左へ曲がると直ぐに国鉄京都駅に着く。国鉄京都駅北に、目的の丸物百貨店が大きく聳えていた。

京都駅から更に市電で数駅北へ行けば、烏丸(からすま)界隈には大きな百貨店や、そこから東へ歩いても行ける距離の河原町には他の百貨店もあった。

だがその当時、京都伏見方面からの庶民派には丸物百貨店に人気があった。

丸物百貨店は、地元の人間をはじめ、他県から国鉄を使って、滋賀県や大阪高槻界隈からの人々にも憧れの買い物が出来、大衆の憩いの場でもあった。