【前回の記事を読む】上北沢のとある精神病院は、住人達に差別用語で呼ばれていた。ずっと鉄格子に閉ざされたイメージ、風評被害があったが…
第一章 介護は人生の循環
「介護マニュアル」にはないだろうプラスアルファの思いやり
私が入居した時のホーム長は入居者スタッフと一丸になって動いていた。
ある朝食の時だったと思う、リクライニング車椅子の入居者の介助をしていた。リクライニング車椅子は通常の車椅子より低くなる。
彼は介助している間ずっとフロアーに膝をついたままスプーンで食事を(多分ペースト状の食事だろう)入居者の口に運んでいた。
スタッフ用の介助の丸椅子は用意されているのだがそれでは多分スプーンが多少上になってしまうからだ。
私はこの時「これが介護!」と感動した。
彼に関しては多くの思い出があり、それを思い出す時目頭が熱くなることもあり、また楽しかったなと思うこともある。
彼が他のホームに転勤していった後、彼のホームからスタッフが応援に入ったことがあった。(ホーム間でその時の事情でお互いにスタッフが支援に入ることがある。)
三人のスタッフが交替して支援に来ていた。
その時の三人のスタッフが口を揃えたように「ホーム長は入居者、スタッフのことをとても思ってるんですよ」と言った。この三人のスタッフが皆とても明るかったことを思い出す。
このホームの長老組の一人、藤堂さんは「四代のホーム長を見てきたけどあの方は格別だった」と語った。
最近「働き方改革」がどの業界でも問題になっているが私は彼が自分の体と時間を犠牲にして働いていたのだと思う。
上の者として下の者たちの働く環境づくりを考慮しなければいけないのでは、そうも思ってしまう昨今である。