「いやいや、そこらの洟垂(はなた)れガキとは訳(わけ)が違う。うちの家系(かけい)だから頭もいいし、慎太郎には見所(みどころ)がある。慎太郎が好きな道に進めばよい」と大いに身びいきした。

婆ちゃんという名コーチの支(ささ)えを得た慎太郎は、山野草にのめり込んでいった。

そんな流れの中で当然(とうぜん)知ることになった「日本の植物学(しょくぶつがく)の父」と呼ばれる「牧野富太郎博士(まきのとみたろうはかせ)」に憧(あこが)れ、さらに山野草に夢中(むちゅう)になった。専門家とは言えないまでも、かなりの知識を身に付けていった。

その知識の豊富(ほうふ)さは、中学校の理科の先生ももちろんかなうものではなかった。

(将来は、絶対に植物学者(しょくぶつがくしゃ)になるんだ)と心に決めていた。

高校生となった清水慎太郎は、山野草好きが深まっていった。

ところが、清水慎太郎はちょっとした人生の岐路(きろ)に立たされたことがあった。高校生の慎太郎が、山野草と同じように夢中になりかけたのは「数学」だった。

それには、欲得(よくとく)など垣間(かいま)見られないいかにも数学者そのもののように見えた数学担当の藤本(ふじもと)先生の存在が大きかった。

次回更新は1月7日(水)、11時の予定です。

 

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