【前回の記事を読む】歌でも歌っていれば戦争などは起こるはずもないのに…。偉い人たちは、何でバカな戦争を起こしちまったんだ

二 清水の爺ちゃん高校の先生になる

「慎太郎、山で山菜を見つけ、歌っている時ほど平和な時はないぞ。何があっても、山菜採りと歌を歌うことだけは大きくなっても続けろや」

そんな時には、春霞(はるがすみ)のもやもやとした天候の時でも、慎太郎の心の中に青空がパッと広がり心が豊かになるのだった。

婆ちゃんはよく、冗談(じょうだん)がてらに自慢(じまん)していた。

「ほら、慎太郎、婆ちゃんは歌が得意だろう。山菜やキノコを見つけた時ほど嬉(うれ)しいことはないぞ。あまりにも嬉しくて我(われ)を忘(わす)れ、大声(おおごえ)で、『~♪』と大声(おおごえ)で歌い舞(ま)い踊(おど)ったら、婆ちゃんの歌の上手(うま)さと迫力(はくりょく)に、茂(しげ)みに隠(かく)れていた熊公(くまこう)も舞い踊りながら逃げていったわ」

慎太郎は、あまりにもおかしく笑いが止まらなかった。婆ちゃんはさらに調子(ちょうし)づいて冗談を言って慎太郎を笑わせた。

「ほら、慎太郎これが、シシウドだ」

みると、シシウドの大群(たいぐん)が辺(あた)りを席巻(せっけん)していた。

「慎太郎、熊公は秋には冬ごもりのためにドングリを狂(くる)ったように食べるが、春には、このシシウドをよく食べる。もちろん、これは人間も食べられる。シシウドはイノシシが好んで食べるからこの呼び名が付いたんじゃが熊公もよく食べる。シシウドが生えるところには熊公が来る。気を付けなければならん」

シシウドは、辺(あた)りを席巻(せっけん)するように群落(ぐんらく)を作っていた。