「こっちはセックスしようって盛り上がってんのにさ、それ打ち明けられたんだぜ? 母親の顔思い出すよりきつかったわ」

「それは申し訳ないけどきついわ」

「マジか、それ何、乳がんとかそういうヤツ?」

「いや、詳しくは聞いてないけど。中学の時とかになんか手術したんだって」

「中学? 何、その子ビッチだったわけ? 性病とかそういうヤツ?」

「そういうのも聞けなかった。もうマジで、すげー萎えたよ。向こうはさ、俺が『大丈夫だよ』とか言うって期待してんのかなと思ったらだるかったし」

「打ち明けるってことは、期待してたんでしょ」

「うわー、きついなそれ」

「俺、おっぱいフェチだし? 普段はパッド入れて目立たないようにしてるんだって」

「それはパッドを見抜けなかったお前が悪い」

「それでおっぱいフェチとかよく言えたな。真のおっぱいフェチである俺に謝れ」

爆笑。彼らの笑い声が、脳みそに響いた。足がすくんで動けないっていうのは、こういうことなのだと実感する。

(なんでこんな人を好きになったんだろう)

(信じてたよ、期待してた。この人なら受け入れてくれるかもしれないなんて、甘いことを考えた私が悪かった)

(そんな期待なんてかけるような相手じゃないってことを、見抜けなかった私が全部悪いんだ)

くるみはなんとか漏れ出てくる嗚咽をこらえた。この場を去らなくては。この授業は受けられない。こんな状況で、彼のいる教室には入れない。

「つーか、そういう大事なことはもっと先に言ってくれないとさー。付き合う前に言っておいてほしくね? 訳あり商品だって告知しなきゃ詐欺だろ」

「お前、人間の心ゼロじゃん。訳あり商品ってひでえ」

「いやいや、そうでしょ。こっちはそれ期待して付き合ってんのにさ」

彼にとってあれは、恋ではなかったのだ。くるみは重い足をなんとか踏み出して、その場をあとにする。

(もう、私には一生恋もできないや)

できるだけ顔を上げたくなくて、アスファルトと方向感覚だけを頼りに学校を出た。溢れ出した涙は、アスファルトに染みを作っていた──。

次回更新は1月8日(木)、11時の予定です。

 

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