喉の奥は熱くにぎやかだった。そこには様々な生き物がいた。生き物はスズキ青年を歓待した。
「私は疝気(せんき)の虫だ」
「俺は腹の虫!」
「自分は疳(かん)の虫だよ」
「あたしゃ泣き虫さ」
「儂はアニサキスじゃ」
「僕はエヘン虫だ!」
虫どうしあっという間に気心が触れた。非公式警察としてやってきた理由を説明すると、虫どうし何事か相談が始まった。
やがて結論が出たらしく、リーダー格の疝気の虫が語るには、「大店のお嬢さんのところのコオロギの話は知っているよ。彼は少しばかり思い上がるところがあって、生類の哀れさを天国に訴えに行ったんだ。だから地獄にはいないよ」
「そうか! 道を間違えたか」
「でも心配ないよ。ここは腹の中だから、胃液で溶けきる前に胃壁に食いつけば赤鬼は吐き気を覚えて吐き出すことになる。君も虫だから、急いで門を登って塀の上を進むと、閻魔庁を抜けて地獄の入口になり、灼熱地獄、極寒地獄、阿鼻地獄、叫喚地獄を越えると血の池地獄に囲まれた剣ヶ峰があって、その頂上で天界と異空間交通がまだあるはずだから、それを利用すればいい」
「ちょっと道が分かりづらいが?」
「それじゃあこの疳の虫を連れてゆけばいい。道案内だ」
「それでは皆さん、感謝いたします。現世に戻ったらこのことは末永く語り継ぎます」
「お礼はいいから。さあ、溶ける前にお急ぎ」
スズキ青年は勇んで胃壁に噛み付いた。すると食あたりを起こしたと思った赤鬼は、スズキ青年と疳の虫を吐き出した。
吐き出されると2匹は急いで門の上へ登り、疳の虫の進むままに壁の上を通じて閻魔庁を抜け、それぞれの地獄を通った。
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