捜索は順調に進んだ。スズキ青年は鎮守の木に取り付き、ウロの中に入った。
時折ものすごいスピードで何者かが出入りしてゆく。人魂だったり、妖霊だったりするのだろう。
奥へ奥へと進むと、中は意外と暖かだった。光源はわからないが、ぼんやりとした光に包まれている。いつの間にか幽界に進んでいるものらしい。
やがてウロの道は二手に別れた。道標があって、右は天国、左は地獄とある。
右の道は大きく晴れやかだった。左の道は狭く湿っている。
虫は小さく体を収めることのできる場所が好きだ。だから地獄へ向かって捜索は進められた。
スズキ青年は人っ子一人いない河原や、幅の長い川を自力で渡った。虫は人に比べて小さくはあるが、活動力は優れているのである。
やがて門が現れ、表札に閻魔(えんま)庁とあった。門番の赤鬼青鬼がスズキ青年を認めた。
「なんだコオロギ、おまえ死んではいないじゃないか」
「自分はこれでも非公式警察のものなんですが、失踪者の捜索の依頼がありまして、地獄へ向かった次第であります」
「なに? 非公式警察だと? そうは言って、都の監査委員会の使いではあるまいな?」赤鬼は急に疑い深くなった。
しまった! そうは思ってももう遅い。証人暗殺!
哀れスズキ青年は赤鬼にひとつかみされ、飲み込まれてしまった。
しかし九死に一生、指先から口内へ放り込まれるとき、ぴょんと飛び跳ねたのである。口歯で噛み砕かれるより先に、喉の奥へと入り込んだ。