「おう、お疲れ」

「怪我、どう? まだ復帰は厳しそうなの?」

「うん、もう無理じゃないかな。引退試合までに完治しないと思う」

「そっか……」

志村はいたたまれない顔をする。

「気にすんなよ」

僕は志村に声をかけ、校門に向かう。背後から声が聞こえた。

「志村、もうあんまりあいつのこと気にかけんな」

「いや、でも……」

「怪我は同情するけど、試合中に無理したあいつも悪いだろ。あの場面で無理に前に出る必要なかったんだよ。結局怪我してチームの足引っ張ってるんだからさ。あいつにあんまり優しくするのは違くないか?」

同じ学年の部員だろう。チームの中には僕の怪我をよく思わない奴も多数いるようだ。なんとなくわかっていたことだ。

秋に開かれた試合のことだ。全国大会へ出場できる一つの枠を目指して臨んだ決勝戦。前半戦はこちらが一点リードし、優勢だった。しかし、後半戦で悲劇は起きた。

相手選手の足と僕の膝が接触し、お互いに転げた。相手選手はすぐに立ち上がり、試合に復帰できたが、僕は無理だった。膝を襲う激痛が止まず退場し、その後のチームは思うような試合運びができず、ついには逆転負けしてしまった。

試合後、僕を責める者はいなかった。それどころか、みんな申し訳ないという表情を前面に出した。けれども、僕も合わせる顔がなかった。そればかりか、病院では半月板損傷という診断を下され、部活への参加を禁止された。

自分がチームを引っ張っているという自負があった。だからこそ、さっきみたいな発言は堪える。実際、自分でも後から振り返ってみると、あの怪我をする直前無理に相手の選手の前に出た自覚はあるのだ。あんな行動を取っていなかったら……。いくら考えたって仕方ない、過去のことだ。