ベッドに腰掛けると、ちょうど隣のベッドのカーテンが開いた。

「あ……」

「あ……」

お互いにそれだけ発して向かい合う。

隣のベッドから顔を出したのは、同じクラスの緑川遥香(みどりかわはるか)だった。目と鼻がくっきりした可愛い顔を持ちながら、背が低いためにリスのような小動物を彷彿とさせる。男子の中で密かに人気があるのだが、あまりクラスでは目立つ方ではないため、知る人ぞ知る隠れた美少女といったところだろうか。

まさかここでクラスメイトに会うとは。自分の席が前から二番目の窓側に位置するため、他のクラスメイトが視界に入らない。教室の一番後ろの席に座る彼女が、ずっといないことにまったく気づいていなかった。

「野上くん、どうしたの?」

彼女の方から先に口を開いた。

「ああ、頭が重くて」

「それ、本当?」

「……え?」

「あんまりそんな感じに見えないから」

彼女はくりくりの丸い目で、僕の目をじっと見つめる。

次回更新は12月30日(火)、11時の予定です。

 

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