「いい加減にして! 俊雄さんを誘惑したりするのはやめて下さい!」
いてもたってもいられずに、私はそう叫んでいた。
「誘惑じゃなくて、運命なのよ。私達が一緒になるのは」
頭の中にお花畑が咲いてるんじゃないかと思えた。
「場所を変えないか? 店内じゃ迷惑だ」
長澤さんがそう提案をした。確かにさっきから他のお客様の視線を集めている。野次馬って感じの視線だ。
「この近くに、カラオケボックスがあるから、そこで続きをやろう」
続けて、場所の提案もしてくれる。確かにカラオケボックスなら会話は漏れない。
私達は居酒屋の会計をして、近くのカラオケボックスに場所を移した。
「初めましての方もおみえですので、自己紹介をいたします。俊雄さんがお勤めの出版社で、社長秘書をしております、田中悠希と申します。先日、俊雄さんとお見合いをいたしまして、相性が合うと思えましたの。直ぐにでも結婚をして、俊雄さんの子どもを産みたいですわ。これが今の願いですの」
恋人を前に、よくも言えたもんだと思った。
「悠希さん、僕は何度も言っているけど、恋人の亜紀がいます。僕は彼女を愛しているので、君と一緒になる事は考えられない事を分かって欲しい」
俊雄さんが真顔で言うも、悠希さんは笑顔で、私は俊雄さんと結ばれる運命、と言い切る。
「よく考えてみて下さい。俊雄さん、貴方に初めてを捧げて結ばれた時、お互いが大切な存在であると確信したはずですわ。とても気持ち良かったんですもの。それは運命の相手だからですの」
「あの、悠希さん。俊雄さんは、私の恋人なので、もうちょっかいを掛けるのはやめて下さい。父親の力を使って、無理やり言う事をきかせようとする事も。私と俊雄さんは、とても迷惑をしているんです」
私は思っている事を吐き出した。俊雄さんの方を見ると、悠希さんには悪いけど亜紀の言う通り、と繋げた。ここまでハッキリ言えば、どれだけ神経が図太くても諦めるだろうと思ったのだが甘かった。