【前回の記事を読む】親戚の集まりに誘われるも「娘はつれてこないでほしい」ということが条件だった。その理由は他の子どもたちから…

第4章 一人になった珠輝

初めて知った我が宿命

祖父母や叔父たちとの同居によって珠輝が精神的にも、かつて経験したことのない悲しみや辛さ、屈辱を味わうことになろうとは誰が予想できただろう。

いや、大人という者は児童心理学にでも首を突っ込んでみないことには理解などできないだろうし、まして障害児に対する心持ちなど解かれという方が無理だろう。

珠輝が自分の意見を述べようものなら母をはじめまわりの大人に、「この子は人並みないくせに口ばっかり達者だ。」とか「こましゃくれて可愛げがない。」と言われてしまう。

目が見えないというのは大人に笑いかけることはできないし、目で話しかけることもできなくてただ言葉だけを発する子供などさぞ可愛げのないものだろう。いつも素直にただ謝っておとなしく引っ込んでさえいれば彼等には都合がよかったろう。

悲しいかな彼女は生まれつき人に可愛がられる素質など持ち合わせていなかったようだ。

祖父母一家と同居するようになると今までなかった物が家の中に運びこまれ様子も全く変わってしまう。珠輝はついそれらを触ってしまい母に随分と折檻を受けるのも再々だった。

物を触るということは珠輝にとって未知の世界を知るための興味だったろうが、それを大人に理解してもらう術を知らなかった。

さらに二歳半下の従姉妹の富子と喧嘩でもしようものなら大変だった。